椅子・床・車での正しい座り方は?着物の着崩れを防ぐコツを紹介

着物を着たときに美しく見せるためには、立ち姿や歩き方だけでなく、座り方にも気を配る必要があります。
正しい座り方を意識せずにいると、すぐに着崩れが起きたり、帯や裾にシワが寄ってしまったりすることがあります。
特に椅子に座る場面、床に座る場面、車での移動中など、それぞれのシチュエーションに応じた姿勢や動作が必要です。
この記事では、着物を着た状態での正しい座り方と着崩れを防ぐための具体的な工夫を紹介します。
どのような場面でも着姿を美しく保ちやすい座り方の基本を知り、スムーズで快適な動作で着物を楽しみましょう。
目次
基本 │着物を着たときの座り方

着物を着て過ごす際は、姿勢や所作に細やかな配慮をすると着崩れを防ぎやすくなり、より美しい印象になります。
ここでは着崩れの原因や姿勢の重要性、座るときに意識したい基本動作について詳しく紹介します。
着崩れが起こる原因とは?
着物は身体に沿わせて着付けるため、わずかな姿勢の崩れや不注意な動作でも着崩れが起きやすくなります。
特に座る場面では、腰やお尻にかかる圧力や座面との摩擦によって、おはしょりや裾が乱れやすいです。
また、姿勢が猫背であったり、深く座り過ぎたりする姿勢も帯や襟元にシワを作る原因になり、やはり着崩れを招きやすくなるでしょう。
着付けの仕方や素材の違いも着崩れに影響しますが、立つ、座るといった基本動作も重要です。
原因を正しく理解して、外出中でも安心して着物姿を保ちましょう。
正しい姿勢を意識することの重要性
着物を美しく保つには、姿勢の安定が欠かせません。
背筋を真っすぐに保ち、顎を引いて肩の力を抜くと、帯や襟元の乱れが生じにくくなります。
着物は身体のラインに沿って着付けられているため、少しの姿勢の乱れでも着崩れに直結しやすいです。
また姿勢が見た目や印象に与える影響も無視できません。静かな動きと安定した重心が、着物にふさわしい落ち着きと品を引き出すでしょう。
座る時に気を付けること
着物で座る際は、動作のひとつひとつに注意を払いましょう。
まず膝をそろえて裾を軽く持ち上げ、背筋を伸ばしたままゆっくり腰を下ろします。勢いよく座ると、帯に負担がかかったり裾がめくれたりする恐れがあるため、「ゆっくり」を意識しましょう。
椅子に座るときは浅めに腰掛けることで帯が潰れにくく、全体の着姿も整います。
床に座る場合は正座が基本で、無理のない動きが大切です。
立ち上がるときも同様に、裾や帯の状態に気を配りながら丁寧に動くようにしましょう。
椅子に座るとき│着物での正しい姿勢とポイント

着物を着て椅子に座る際は、ちょっとした動作で帯や裾が乱れやすくなります。
ここでは、美しい着姿を保つための座り方や、長時間の着席・立ち上がるときの注意点について紹介します。
正しい椅子の座り方
椅子に座るときは、まず背筋をまっすぐに伸ばしたまま膝をそろえ、裾を軽く手で押さえながらゆっくり腰を下ろします。
勢いよく座ると裾や帯がずれやすくなるため、ゆっくりした動作を心がけましょう。
座る位置は浅めに保ち、帯が背もたれに押されないよう、もたれかからないのが基本です。
足をそろえて斜めに流すようにすると、裾も乱れにくく見た目も上品です。椅子に座る所作ひとつひとつを丁寧に行うことで、着物姿の印象は大きく変わります。意識的な動作を心掛けましょう。
長時間座っても着崩れしにくいコツ
長時間座る場面では、帯やおはしょりの乱れが生じやすくなります。そのため、腰を掛ける際は浅く、背もたれには触れないように姿勢を保つように意識しましょう。
また、足元を整えて斜めに流すことで、裾が崩れるのを防ぎやすくなります。
背筋を伸ばした状態を維持するには、無理のない範囲で骨盤を立て、腹部に軽く力を入れるのも効果的です。
座り続けていると着崩れしやすいため、可能であれば、時折立ち上がって姿勢を整えるようにするとよいでしょう。
椅子から立ち上がる時の注意点
椅子から立ち上がるときも丁寧な所作が必要です。静かで丁寧な動作を意識することが、着崩れを防ぐコツになります。
まず、膝をそろえたまま上体をやや前に傾け、裾が乱れないよう手を軽く添えて支えながら立ち上がります。
勢いよく立つと帯や裾が引っ張られ、着崩れにつながるため、ゆっくりとした動きを心がけましょう。
また、立ち上がる際は椅子の背もたれに手を掛けるのではなく、自分の膝上にそっと手を添えると自然な動作になりやすいです。
立ち上がった後はすぐに裾の状態を確認し、必要であれば軽く整えてみてください。
床に座るとき│着物での正しい姿勢とポイント

畳の上や和室で過ごす場面では、椅子に座る時と同様、着物を着た状態での座り方に気を配ることが着崩れ防止につながります。
ここでは、正しい正座の方法やTPOに合わせた座り方、立ち上がる際の動作について紹介します。
正しい正座で美しく見せるコツ
正座中は足の甲や足首が圧迫されやすいため、背筋を伸ばして重心を前にすることで、しびれを軽減できます。
また、かかとの上ではなく足の間にお尻を収めると、足への負担が少なくなるでしょう。
正座をする際には、まず右足を半歩後ろに引き、右手で上前を少し引き上げます。
次に左手で上前の太もも部分を押さえながら腰を落とし、右手で上前の裾を膝の下に入れながら膝をつきましょう。
座った後は両膝をやや上げて、裾の乱れを右手で直し、両袖を膝の上に乗せます。それから背筋を伸ばし、肩の力を抜いて座ることで、美しい姿勢を保ちやすくなります。
ただし、お茶席などの流派によって様々な座り方があります。
あぐら・横座りはOK?TPOに応じた座り方
あぐらや横座りは、着物の形を崩しやすいため、基本的には避けた方がよいとされています。
しかし、カジュアルな場面や自宅でのくつろぎの時間など、フォーマル性の低い場面では許容されることもあるでしょう。
横座りの場合、足をそろえて座り、膝や帯の上に手を置くことをおすすめします。
とはいえ、あぐらや横座りはTPOを選ぶ座り方です。同席する相手や場の雰囲気に配慮した選択を心掛けましょう。
床から立ち上がる時の注意点
床から立ち上がる際は、身体の軸を意識し、まっすぐな立ち上がりを心掛けることできれいな動作になります。
まず両足のつま先を立ててから、かかとにお尻を置きます。
次に右手で着物の上前の太もも部分を押さえ、片足をやや前にずらしてそのまま立ち上がり、両足をそろえましょう。
立ち上がった後は裾の乱れや帯のずれをその場で確認し、必要に応じて直す習慣を持つと美しい姿を維持しやすくなります。
床に手をつきすぎないように注意し、上品な動作を心がけましょう。
車に乗るとき│着物での正しい座り方や動作

車での移動は着物に負担がかかりやすい場面です。乗り降りやシートベルトの扱い方を誤ると着崩れやシワの原因になります。
ここでは、車で移動する際、着姿を美しく保つための基本動作と注意点を紹介します。
車の乗り降りの基本動作
着物で車に乗る際は、まずドアの前で車体に対して斜めを向き、先にお尻から座席へ腰を下ろします。その際、手で上前を押さえて裾がめくれないようにしましょう。
次に両足をそろえて車内へ入れます。
降車時も同様に、両足をそろえて外に出し、最後に腰を上げる順序で行うと、裾が乱れにくくなるでしょう。
急な動きをすると着物が引っ張られて着崩れやすくなるため、すべての動作をゆっくり丁寧に行いましょう。
シートベルトを締める際の注意
シートベルトが帯に直接当たると、帯が潰れたりシワができる原因になります。
そのような着崩れを防ぐために、腰ベルト部分を帯のやや下を通すように工夫すると負担が軽減されます。
さらに、シートベルトの上から柔らかいタオルやショールなどを巻くことで摩擦を和らげ、着物へのダメージを抑えやすくなり、着崩れ防止に効果的です。また取り外す際はシートベルトを軽く持ち上げながら外すと良いでしょう。
装着時に帯や襟にシートベルトがかからないよう、手で調整しながら締めることも意識しましょう。
長時間の移動でも着崩れを防ぐコツ
車で長時間移動する際は、深く腰掛けすぎないように意識して、帯の型崩れや全体的な着崩れに注意しましょう。
背もたれにもたれずにやや前傾姿勢を意識すると、帯の形を守りやすくなります。足を組むと着物がねじれて崩れやすくなるため、膝をそろえて斜めに流す姿勢を取るのもおすすめです。
また、可能であれば定期的に車を降りて姿勢や帯周りを整える時間を取り入れれば、長時間でもきれいな状態を維持しやすくなります。
ただし、着崩れを意識しすぎず、安全な乗車、交通ルールや法律を優先するようにして下さい。
着物の着崩れを防ぐためのポイント

着物姿を美しく保つためには、着付け時の工夫と外出中のこまめな確認がおすすめです。
ここでは、腰紐や伊達締めの扱い方、姿見の活用法、外出先での応急処置について紹介します。
腰紐や伊達締めの締め方を意識する
着崩れを防ぐ基本は、腰紐や伊達締めを適切な位置でしっかりと締めることです。緩すぎると動くたびに裾や襟元がずれてしまい、逆に締めすぎると身体に負担をかけてしまいます。
特に腰紐はウエストではなく骨盤の上あたりに巻き、動きに合わせてずれにくい位置に調整します。着付けの基本ですが、改めて意識してみてください。
伊達締めは帯に近い位置で体にフィットさせ、着崩れの原因となる襟元のゆるみを防ぎます。
姿見でこまめにチェック
着物を着て過ごす際には、定期的に姿見で全体の着姿を確認することをおすすめします。
特に長時間座った後や歩行中には、帯や襟元、裾のずれが生じやすいため、違和感を覚えたタイミングで鏡を見るのが理想です。
目立つ着崩れを防ぐには、小さな変化に早めに気づき、こまめに整えることが重要になります。
外出先でも、可能であればトイレや試着室などの鏡を利用し、着姿を確認する機会を意識的に設けてみてはいかがでしょうか。
外出先での応急処置方法
外出先で着崩れに気づいた場合は、落ち着いて部分ごとの処置を行いましょう。
小型の鏡や予備の腰紐を携帯しておくと、突然の着崩れにも冷静に対処しやすいためおすすめです。
外出先で襟元が緩んだときは、伊達締めなどをそっと引き直し、手のひらで襟の形を整えます。
裾が乱れた場合は、トイレなどで裾を持ち上げて位置を調整し、腰紐が緩んでいないか確認します。
帯のズレが目立つときは、帯締めを締め直して安定させ、見た目を整えましょう。
また、外出前には目的地に着崩れを直せる場所(広いトイレ、更衣室など)があるかどうか確認しておくと、いざという時に役立つでしょう。
まとめ
着物を美しく着こなすためには、座り方や立ち上がり方、車での移動の際、着崩れを起こしにくい所作をすると効果的です。
椅子や床、車内での姿勢や動作を丁寧に行うことで、帯や裾の乱れを最小限に抑えられるでしょう。
また、腰紐や伊達締めの締め方を工夫する着崩れ防止策を取り入れ、さらに姿見によるチェック、応急処置の方法を把握しておけば、外出中の急な着崩れにも落ち着いて対応できます。
ただし、無理をせず、体調に合わせた着方をするようにして下さい。着崩れをした際に直せるように練習しておくのがいいでしょう。
株式会社辻和でも、ご希望のお客様には着崩れを防ぐコツ や着物での座り方・立ち方、車移動での注意点など、着物と所作の関係についてご説明させていただきます。
着崩れは着物を着るときにどうしても切り離せない心配ごとですが、所作やコツを知っていれば上手に対応し、美しい着姿を保ちやすくなります。ぜひお気軽にご質問ください。